第二回:「百済寺公園
vol.2」
■登場人物
ゆう
小学校の先生
ト、年配の男性とゆうが話をしている。百済寺公園内にある資料館内で話をしている。彼女は小学校のときのゆうの担任である。
先生:今日はどうしてここへ?
ゆう:祖父母の家がこの近くにあるんです。
先生:そうだっけ。
ゆう:低学年のころは行き来してました。結構祖父母がかわいがってくれて。
先生:だからかなあ、とっても大人びた賢い子だった。
ゆう:そうでしたか?何か難しい言葉が出ると聞かれて答えてたのは覚えてますけど。
先生:語彙が多かったよね。何か確かに難しい言葉を良く知ってたし使ってた。
ゆう:どんな生徒でした?
先生:その質問は難しいね。・・・・・・、
ゆう:はは、なるほど。・・・僕の方もなんかぼんやりとした印象とか・・・、あと毎回公演を観に来てくださっていることとか・・・。
先生:結構うれしくってね。お知らせが来るのも、教え子の”作品”を観るのも。
ゆう:こちらもうれしいです。・・・演劇するとか思ってらっしゃいました?
先生:うーん、正直演劇とかは思いつかなかったけど、発想は豊かだなあ、と。
ゆう:ふーん、なるほど。
先生:君は?あのころは何になりたかったの?
ゆう:文集には弁護士とか探偵って書いてましたね。・・・そういう小説をたくさん読んでたので。
先生:誰かが楠木が分厚い本を読んでる、とか言ってた。
ゆう:あ、覚えてます。・・・あれはミヒャエル・エンデの「果てしない物語」ですよ。思いっきり童話なんだけど。みんなにはそういわれて煙たがられるわけじゃないけど変人扱いで。
先生:でも。みんなとは仲良くやってたんじゃないの。
ゆう:あのころは、まあ、・・・どうだったかな。あんまりよく覚えてないなー。
先生:そりゃそうだよ。
ゆう:・・・うーん、もう20年以上前になるんですねえ。あのころから今でも、職業の夢とかはないんですよ。全部自分で創る演劇をやりたい、とか深海に行きたい、とか宇宙に行きたい、とかは思ってましたけどね。
先生:演劇・・・は、かなったんじゃない?
ゆう:うーん、夢はいまだかなわず、です。今って、結局、単にしたいことをやってるだけかもしれないですし。・・それに仕事は仕事ですからね。
先生:深海とか宇宙っていうのは宇宙飛行士とか科学者じゃなくて?
ゆう:ああ、そういうのは、・・・なんかかっこいいですけど、俺は・・・、ただ行きたい、いってみたい、ってだけですから。
先生:じゃ夢は?って聞かれたら?今の子は結構サラリーマンとか、お金持ちって答えるけど。まあ、それは昔からか。
ゆう:自分のなるべきものとなるって感じかな?目的のために何者にでもなる、って。
先生:ほんとう。
ゆう:答えてましたね。中学校ぐらいからは。
先生:ちょっとやりにくい子だね、先生としては。面白いとは思うけど。
ゆう:こう見えても結構先生たちとは基本的に仲良くなりましたよ。
先生:そうだね。思慮ぶかそうだし。
ゆう:ほめていただいて恐縮です。
先生:いやちょっと心配になったりしたんだよ、昔。
ゆう:えっ?
先生:そういえばあの時話したのはおばあさまだったかも。
ゆう:へえ・・・?
ト。子供たちが嬌声をあげる。
先生:そろそろ行かなきゃ。
ゆう:こういうところも社会見学っていうんですか?来るんですね?
先生:神社と遺跡とこの林。観るべき、見せるべきところがたくさんあるじゃない。
ゆう;そうですね。考古学は高校のころ、めっちゃやりたかったんですよ。それで今日、ここに、あ・・・。
ト、ゆうは何かに気づき立ち上がる。先生も見る。
先生:うちの子かと思ったら
ゆう:違いますね。大人だ。女の子だ。ふふ(笑)はとと話してるみたい。
先生:ほんと?なかなかできないよ。子供たちなら、やれそうだけど。
ゆう:そうですね。でも面白い人では、ありそう。
先生:ではでは。
ゆう:僕もこれで帰ります。
先生:おじいちゃんたちのところへ?
ゆう:説教されてきます。
先生;なんで?
ゆう:今、失職中なんです。
先生:そう。でも君の生き方は・・・・・・素敵だなって、そう思うよ。
ゆう:ありがとうございます。彼らにもそういってあげてください。今も、それから何年後かに彼らのひとりが会いに来ても。
先生;そうするよ。今日は楽しかった。ありがと。
ゆう:こちらこそ。なんか懐かしく、そしてなんというか・・・確認できたって言うか・・・。
先生:じゃあ。
ゆう:ありがとうございました。
ト。立ち去るゆう。見送る先生。先生は微笑んで子供たちのほうへ。
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