第八回:「御殿山美術センター」
■登場人物
ゆう
春子
ゆう:どう?最近調子は?
春子:やっぱり儲からない
ゆう:まあ、そうだわなあ。
春子:うん。
ゆう:でもここでやれていいじゃん
春子:ああ、ここに呼ばれるようになったのはね。ただだし、会場費。
ゆう:いいじゃん。ここは俺の憧れの場所だし。
春子:へえーー。
ゆう:「耳を澄ませば」って映画あったっしょ。
春子:ああ、高台にある図書館?とかは一緒ね。
ゆう:そう。なんかさあ、あれ見た後俺さあ、山の手にお嬢さんがいるんじゃないかって結構いい場所を探したわけよ。
春子:なんで?全然つながらないんだけど・・・。
ゆう:いや、だから出会いを求めたっていうのともし彼女ができたら景色のいい穴場を見つけてびっくりさせよう、って思って京都まで行ったんだよ。・・・っていうのは少しうそで、自転車でいけるのはさあ、八幡市ってわけで、でも坂の上には別世界があるって言うのは何か結構おんなじで、日の出とか見たりしたんだよね。
春子:一人で?
ゆう:そう。
春子:どの辺で御殿山に戻ってくるの?
ゆう:後十秒後、で、高校の卒業公演、演劇部の、それに出たのね、俺演劇部じゃなかったけど。で、そん時の稽古場所がここだったの。
春子:ほああー。
ゆう:で、ここはいいじゃん、って。で、周りにはかわいい女の子もいたけど・・・。みんな演劇に燃えてて、おれはサッカーの練習したりなんなりで、あんまり身を入れて稽古してなかったなあ、今思えば。
春子:今は稽古ばっかりでしょ?
ゆう:ああ、まあね。・・・・・・どれくらいから画家って意識した?やっぱ将来の夢、とかで書いてた?
春子:いや、そういうのは・・・。
ゆう:おれもあのころこんななるなんて思わなかったなあ。たぶんあのころ一緒にやってた人たちが今の姿見たらびっくりするんじゃないかなあ・・・。
春子:これで食って行ってるなんてね。
ゆう:いや、なかなか食えてないよ。綱渡り。うーん、難しいなあ。
春子:芸術と社会?
ゆう:あああー、いつもの話になっちゃった。
春子:いつもの話だね。
ゆう:でもさあー、別に夢とか実現したいわけじゃないからなあ、ほんとに。仕事じゃないならやれないなあ、たぶん。でも儲かってないのがかなり変なんだよなああ。
春子:うーん、おんなじかなあ、・・・描いてたらこうなったと言うか、いまだに書き続けてるだけって言うか。
ゆう:うん、何度も聞かせちゃったかもしれないけど、俺も別に職業の夢とかって答えたことなくて。
春子:自分のなるところの者となるってやつ。
ゆう:そう。言い方まで似せなくていいから。何か演劇創るのは好きで、全部オールメイドのチャップリン映画の演劇版は創りたいって子供のころ思ったことはあったんだ。
春子:うん。
ゆう:でも、ね。仕事かあ。・・・・・・。
春子:・・・・・・。
ゆう:うーん。・・・・・・・。
春子:あっこのフェンスからさ、割と遠くまで見えるでしょ。タワーシティっだっけ?からなぎさの方のあんまり変わってない田畑とか、それからここ御殿山に住んでいる人たちの生活とか・・・。何かアー言うの眺めるの好き。
ゆう:俺も。
ト、春子はフェンスの方へ移動する。ゆうもついていく
春子:またここでやったら?演劇ワークショップ。
ゆう:そうだね。めっちゃ初期のころ参加してくれてたよね。面白がってくれてた。
春子:いや、あれはほんとに面白いよ。生活に根ざしてああいうのあっていいと思う。
ゆう:そだね。経済活動と結び付けなきゃな。
春子:それが仕事でしょ。
ゆう:そうだね。
ト、ゆうは春子の隣に並ぶ
春子:有名になりたいわけじゃなし、何がしたいかっていったら創りたい、ただそれだけで。
ゆう:うん。深いね。・・・・・・耳を澄ませばもなんか創作の話だから好きだったんだよなあ。物語の力っていうか、あれ励まされる。
春子:うん。
ゆう:まあ、もちろん、プロポーズする彼もうらやましかったけどね。中学でって・・・(笑)
ト、春子は階段を登る。振り向いて
春子:あの、なんか、女の子来たよ。・・・髪の毛こんくらいで、割と若い?
ゆう:ああ、おれと同い年くらい?じゃたぶん蛍子のことだ。
春子:ステディ?
ゆう:古い言い方するなあ。パートナーって言うのが今はナウい。
春子:(笑)
ゆう:(笑)そういう人が居てくれるのは幸せだよな。
ト、分節点のような階段でゆうは見上げながら春子を見上げる。
春子:ああ、絶対ね。
ゆう:春子さんはしないの?・・・結婚?
春子:うーん、してもいいけど、なり手がね。
ゆう:俺もなあ、このままだとまだ無理だ。
春子:・・・・・。
ゆう:もうひと頑張りかなあ。
春子:もう一頑張りか・・・。
ゆう:ああ。
春子:なんかねー、不安なときって癒されたいって思うよねえ。
ゆう:思う思う。
春子:何か枚方全体眺めるのって癒されたりする。
ゆう:うん。かわいくてやわらかくて暖かいものがあってもなんか安心する。
春子:猫とか?
ゆう:彼女とか。
春子:せめぎ合いがいいのかなあ。
ゆう:人を成長させるかも。
春子:お互い頑張ろう。
ゆう:おう。月並みな台詞言っちゃったなあ、おい。
春子:劇作家にとっちゃね。でも手っ取り早いよ。頑張れはる、頑張れゆう!ってね。
ゆう:てね。
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